■ ナノテクビームとマイナスイオンの病原性細菌に対する効果の研究

【実験結果】




10種類の病原細菌を各々の培養用寒天培地に接種した。マイナスイオンを処理しない対照群での形成コロニー数は140-1171個であった(表1)。これらのコロニー数の病原菌はマイナスイオン処理により殺菌された。最もマイナスイオンに感受性の強い病原菌はMRSA, MSSA, Streptococcus pneumoniaeであり、マイナスイオン処理20分により接種された菌数の99%以上が殺菌された(表2、図1)。マイナスイオン処理40分および60分により、被験10菌株のうちそれぞれ7菌株および9菌株においてその菌数の95%以上が殺菌された。被験10菌株のうちマイナスイオン処理に最も抵抗性であったのはPseudomonas aeruginosaであったが、60分間のマイナスイオン処理により約半数のPseudomonas aeruginosaは殺菌された。
【考察】
マイナスイオン処理はグラム陽性細菌(被験菌のうち、MRSA, MSSA, Streptococcus pneumoniaeがグラム陽性菌)に極めて強い殺菌効果を示した。グラム陽性菌とグラム陰性菌とは細胞壁の構造上の点で違いがある。グラム陽性菌では厚いペプチドグリカン層を有するのに対して、グラム陰性菌では薄いペプチドグリカン層の上にペリプラスマおよび外膜が存在する。このような細胞壁の違いがどのようにマイナスイオンに対する反応性が生じるかについては今後検討する必要がある。
現在も尚、MRSAおよびMSSAは院内感染症の重要な起因菌であり、これらの病原細菌による感染症に対する治療および予防は極めて重要である。今回の研究ではマイナスイオンの病原細菌に対する殺菌メカニズムは解明され得なかったが、20分間の処理によりMRSAおよびMSSAの99.9%が殺菌されたという実験結果は注目に値する。今後臨床応用を含めた検討が望まれる。
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